第28回“メモリアル・ホセ・ルイス・ゴンサレス”国際ギター講習会

 2002年7月1日から11日まで第28回“メモリアル・ホセ・ルイス・ゴンサレス”国際ギター講習会がスペインのエステージャ(ナバーラ県)で行われました。講師には4年前に亡くなったJ.L.ゴンサレスの後を継いだマヌエル・バビローニが招待されました。
 私はマエストロ・バビローニが継いでから4年連続の参加になりました。登録された受講生の数は11名で国籍はスペイン、アメリカ、そして日本人受講生は、現在スペイン王立音楽院に在籍している諏訪和慶、荒木雄図そして日本から筆者の3人でした。またこの講習会に14年間参加しているミリアンは今年から地元エステージャの音楽院でギター講師を務め生徒を2人連れてきました。時代の流れを感じました。


 
今回のレッスンはリフォームされた文化館「フライ・ディエゴ」の中庭に戻りました。心配していた例の階段の改造はなく、この講習会の1つの特徴である階段での練習も可能でした。大きな入り口の扉、中世の柱、窓枠の装飾等、やはりここには特別な雰囲気と音響があるような気がします。歴史の重みを感じます。


     階段で練習するベアトリス。
 とても過ごしやすい気候の中で講習会は進みました。9日間毎日連続で午前中授業があります。気がぬけないとてもハードなものですが受講生の上達は手にとるように分かります。特に今回は生徒自身に自分の音、演奏を聴き何をしているのかを気がつかせる事に集中していたように感じます。

 ミリアンの生徒達のレッスンでは必ず彼女と一緒で、今後の教材選びやレッスン方法など生徒だけでなく先生にとってもとても学ぶ事の多い内容でした。パンプローナのアカデミーで講師をしているベアトリスも興味深く聴いていました。

 今回の講習会もたくさんのレパートリーを聴く事ができました。ルネッサンスに始まりバッハ、ソルのエチュードからタレガ、フォルテア、アルベニス、バークリー、アセンシオそして武満に至るまでその幅の広さは目を見張る物があります。どのレッスンにも興味深い指摘があり、マエストロの経験の深さ、音楽に対する真摯な姿勢が心の奥まで伝わってきました。

 10日には文化館「フライ・ディエゴ」の中庭でマエストロのリサイタルがありました。今年はタレガの生誕150年にちなんで“タレガへのオマージュ”と題されました。タレガの作品をはじめとするスペイン音楽を得意とする彼ほどこの重要な“オマージュ”に最もふさわしい演奏家である事に疑いの余地はありません。4月の来日公演でもそれを証明してくれました。鳴りやまぬアンコールに4曲応えていました。最後の聴衆のスタンディングオベーションがこのリサイタルの素晴らしさを余すところ無く伝えています。プログラムは、
      12のプレリュード
      4つのマズルカ
      アラビア風奇想曲
      ロシータ          <タレガ>
      第7幻想曲 Op.30   <ソル>
      ゴヤのマハ、悲しき舞曲   <グラナードス>

 
 最終日11日の午前中は生徒達の発表会です。文化館「フライ・ディエゴ」がリフォームで使えなかった2年間講習会に場所を提供してくれた老人ホーム「サント・ドミンゴ」に、感謝の意を込めて企画されました。生徒達はこの講習会での上達の成果を余す事無く発揮し、素晴らしい発表会になりました。聴きに来てくれた人達もとても喜んでくれました。



  講習会の開始を知らせる記事                  生徒達の発表会の様子を伝える記事。
   Diario de Navarra 7月3日付              Diario de Navarra 7月12日付